Page:Textbook of Japanese History for Elementary School on 1943 vol 1.pdf/72

提供: Wikisource
ナビゲーションに移動 検索に移動
このページは校正済みです


をつくし、大君のために、朝敵をほろぼしたてまつれ。もう十一にもなつたそなたを河内にかへすのは、そのためである。」

櫻井のわかれ
櫻井のわかれ

と心をこめてさとしました。さうして、天皇からたまはつた菊水の短刀を、かたみとして、正行に與へました。

兵庫へ着いた正成はみなとがはに陣をかまへ、むらがり寄せる賊軍を右に左に受けとめ受け流して、今日をかぎりと戰ひました。みかたは次々に玉とくだけて、殘るはわづか數十騎、正成も十一箇所の深手を負ひました。もうこれまでと、とある民家に敵をさけ、弟まさすゑに向かつて、たづねました。

「最期にのぞんで、のこす願ひは。」

ななたび人間に生まれかはつて、朝敵をほろぼしたいと思ひます。」

正季は、かう答へて、兄の顏をみつめました。正成は、さもうれしさうにいひました。

「自分の願ひも、その通りである。」

兄弟は、につこり笑つて、しちがへました。家來もみな、續いて、勇ましい最期をとげました。正成は、四十三歳でありました。

義貞が形勢を見て京都にしりぞくと、賊軍はうしほのやうに、攻め寄せて