民をますます幸福にしたいとの思し召しから、國ごとに國分寺をお建てさせになつたのでありますが、東大寺は、大和の國分寺として、また日本の總國分寺として、從つて大佛は、特にその本尊として、いかめしくお造らせになつたのであります。國民は、先を爭つて金や銅や木材などをたてまつり、すぐれた職人が全國から集つて、工夫をこらし、工事にはげみました。しかも、大佛の高さは五丈三尺を越え、大佛殿の高さは、十五丈餘りといふ、すばらしいものですから、なかなかの大工事であり、難事業であります。佛像に用ひる金が足りなくて困つてゐる時、陸奧から金が出て、上下喜びに滿ちたことさへあります。すつかりできあがるまでには、十年といふ長い年月がかかりました。大佛は世界第一の金銅佛で、大佛殿もまた、木造建築として、世界第一であります。今から千二百年の昔に、わが國では、かうした大工事を、もののみごとにしとげたのであります。今、大佛の前に立つて、その大きな姿を拜する時、聖武天皇の御惠みを、さながらに仰ぐとともに、當時の人々のすぐれた腕前を、しのぶことができるのであります。
光明皇后もまた、御なさけ深いお方で、施樂院や悲田院を建てて、身よりのない病人や、みなし兒をおすくひになりました。かうし