このことがあつてからも、翁はやはり竹を取つて、その日〳〵を送つてゐましたが、奇妙なことには、多くの竹を切るうちに節と節との間に、黃金がはひつてゐる竹を見つけることが度々ありました。それで翁の家は次第に裕福になりました。
ところで、竹の中から出た子は、育て方がよかつたと見えて、ずん〳〵大きくなつて、三月ばかりたつうちに一人前の人になりました。そこで少女にふさはしい髮飾りや衣裳をさせましたが、大事の子ですから、家の奧にかこつて外へは少しも出さずに、いよ〳〵心を入れて養ひました。大きくなるにしたがつて少女の顏かたちはます〳〵麗しくなり、とてもこの世界にないくらゐばかりか、家の中が隅から隅まで光り輝きました。翁にはこの子を見るのが何よりの藥で、また何よりの慰みでした。その間に相變らず竹を取つては、黃金を手に入れましたので、遂には大した身代になつて、家屋敷も大きく構へ、召し使ひなどもたくさん置いて、世間からも敬はれるようになりました。さて、これまでつい少女の名をつけることを忘れてゐましたが、もう大きくなつて名のないのも變だと氣づいて、