んので、翁も手のつけようがなくなつて、どうしても宮中には上らぬといふことをお答へして、
「自分の家に生れた子供でもなく、むかし山で見つけたのを養つただけのことでありますから、氣持ちも世間普通の人とはちがつてをりますので、殘念ではございますが……」
と恐れ入つて申し添へました。帝はこれを聞し召されて、それならば翁の家にほど近い山邊に御狩りの行幸をする風にして姬を見に行くからと、そのことを翁に承知させて、きめた日に姬の家におなりになりました。すると、まばゆいように照り輝ぐ女がゐます。これこそ赫映姬に違ひないと思し召してお近寄りになると、その女は奧へ逃げて行きます。その袖をおとりになると、顏を隱しましたが、初めにちらと御覽になつて、聞いたよりも美人と思し召されて、
「逃げても許さぬ。宮中に連れ行くぞ」
と仰せられました。