「別によい器量でもありませぬから、お使ひに逢ふことは御免を蒙ります」
と拗ねて、どうすかしても、叱つても逢はうとしませんので、女官は面目なさそうに宮中に立ち歸つてそのことを申し上げました。帝は更に翁に御命令を下して、もし姬を宮仕へにさし出すならば、翁に位をやらう。どうにかして姬を說いて納得させてくれ。親の身で、そのくらゐのことの出來ぬはずはなからうと仰せられました。翁はその通りを姬に傳へて、ぜひとも帝のお言葉に從ひ、自分の賴みをかなへさせてくれといひますと、
「むりに宮仕へをしろと仰せられるならば、私の身は消えてしまひませう。あなたのお位をお貰ひになるのを見て、私は死ぬだけでございます」
と姬が答へましたので、翁はびっくりして、
「位を頂いても、そなたに死なれてなんとしよう。しかし、宮仕へをしても死なねばならぬ道理はあるまい」
といつて歎きましたが、姬はいよ〳〵澁るばかりで、少しも聞きいれる樣子がありませ