たので、嬉しがつて籠を降す合圖をしたところが、下にゐた人が綱をひきそこなつて、綱がぷっつりと切れて、運わるくも下にあつた鼎の上に落ちて眼を廻しました。水を飮ませられて漸く正氣になつた時、
「腰は痛むが子安貝は取つたぞ。それ見てくれ」
といひました。皆がそれを見ると、子安貝ではなくて燕の古糞でありました。中納言はそれきり腰も立たず、氣病みも加はつて死んでしまひました。五人のうちであまりものいりもしなかつた代りに、智慧のないざまをして、一番慘い目を見たのがこの人です。
そのうちに、赫映姬が並ぶものゝないほど美しいといふ噂を、時の帝がお聞きになつて、一人の女官に、
「姬の姿がどのようであるか見て參れ」
と仰せられました。その女官がさっそく竹取りの翁の家に出向いて勅旨を述べ、ぜひ姬に逢ひたいといふと、翁はかしこまつてそれを姬にとりつぎました。ところが姬は、