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(七)
比の相等及大小
せんとする無理數に外ならず.ユークリツドの比の定義より無理數の觀念に到達するは,實に一擧手一投足のみ.ユークリツドの比例論は實質に於て,現代數學に於ける數の觀念の凡ての要素を具へたり.數の觀念の完成とユークリツド比例論との間に,歷史が二千載の空隙を示せること,今にして之を想へば,實に奇異なりと謂ふべし.事實を知るは易し,其價値を批判するは難し.要は唯立脚點の昂上にあり.
(八)
(二)に擧げたる原則の未だ量の特性を盡さゞるを指摘せる後,而して此缺陷を補修するに先ち,前節に於て古希臘時代に於ける比の觀念を囘顧したるは,以て現時に於ける數の觀念の由る所を明にせんと欲せるに外ならず.
吾人の所謂量に連續の性質あり,而して(二)に擧げたる量の連續に關する性質は,未だ其特徵を盡くさず,此缺陷は何處にか伏在せる.
抽象的の量を表はすに,直線の長短を以てし,更に一層明瞭なる形象を得んが