Page:Shinshiki Sanjutsu Kogi 00.djvu/184

五

168

分數

---

$\alpha$，$\beta$ を與へて $\alpha :\beta$ の値を求むるは

$\alpha :\beta =\gamma :1$

を解きて $\gamma$ を定むるに外ならず．

$\alpha :\beta$ の値が整數 $k$ に等しきときは $\alpha$ は $\beta$ の $k$ 倍なり．此場合に $\alpha :\beta$ の値を求むるは $\alpha =k\beta$ より $k$ を定むることにして，是卽ち倍加の問題の轉倒なり．是故に吾輩は除法の意義を擴張して，$\alpha$，$\beta$ より

$\alpha :\beta =\gamma$

なる條件に適すべき數 $\gamma$ を定むる算法を分數の除法と名づけんとす．實，法，商の語又此場合に襲用すべし．分數除法は法が $0$ ならざる限り，凡ての場合に可能にして常に唯一の結果を與ふ，又特別の場合に於て實及法が共に整數にして實が法の倍數なるときは，商は整數除法の商と異ならず．整數の除法はこゝに定めたる除法の特例たるに過ぎずと謂ふべし．

此意義に從ふときは整數 $a$ を整數 $n$ にて除して得たる商は卽ち分數 ${\frac {a}{n}}$ な