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自然數の起源

數ふるに當て,人必ず此等の物に順序を附けざるを得ず.

吾人の物を數ふるや,一々心の裡に斯の如き複雜なる作用を反復するまでもなく,一見して直ちに其數の三たり,又は五たるを知り得べきこと固より是あり.こは三個五個等少數の物にありては,之を數ふる作用は吾人の屢々反復せる所にして,三個の物,五個の物の與ふる全體の印象は,吾人の記憶に銘せられ,此記憶に扶けられて吾人は殆ど我心に數ふる作用をなすを知覺せずして直ちに其數を知ることを得るなり.此故に少數の物と雖も其物の排列,動靜等が其數を知るの難易に關係すること甚だ多し.正しく列びて靜止せるときは十個以下の物の數を一目して知ること難からざるべけれども,此等の物が連動せるとき,又は不規則に排列せられたる時は,必しも然らず.要するに人,物の數を數へたるときは同時に此等の物に或る順序を附けたりと云ふことを得.甲乙丙等の物あるとき之を數へんとするに當ては,吾人は甲は一個の物なりと認むること,及甲は乙と異なり丙と異なりと認むる外,甲を他の物と區別す