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列幾千臺となく打續き、各國全權を見むとて沿道垣をなせる群集は盛に旗を振り、手を拍ちて送迎す、我々の通過するやジヤポネーバンザイを唱ふるものも數多かりしが、流石は職掌柄プロパガンダに拔目なき新聞課の諸君の事とて、かゝる際には兼て用意に持來せる日の丸の小旗を群集の中に投げ與へ大喝采を博したり。

 ヴエルサイユ宮附近の此日の混雜は名狀すべからざるものありしが、宮殿正門前の大通は一切通行を禁じ、淸掃せられたれば一點の塵をも止めず、華麗の服裝せる共和衞兵兩側に整列し、其燦然として日光に輝ける銀色の兜と、白き鹿革の袴下と黑く光れる長靴とは何れも莊重なる此日の儀式と相應しき光景を