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五、講和條約調印式を見る

 獨逸は果して調印すべきや否や。これ回答期限の切迫し來ると共に何人の唇頭にも上りし最多くの話題なりき。勿論獨逸今日の國力を以てしては假令聯合側の過酷なる條件がいかに彼國民の敵愾心を振起せしむるありとするも、再戈を執りて起つが如きは到底あり得べからざる事に屬す。然れども狡獪なる彼等が種々なる辭柄を設けて決定の延期を嘆願すると同時に一方手を廻して聯合側の內部攪亂を企つる虞ある事は、已に最近佛國都市に於ける同盟罷業の背後に獨人の影の潜めりと云ふ風說あるに徵しても知るを得べく、前途必しも樂觀を許