Page:Sengo ōbei kenbunroku.pdf/80

提供:Wikisource
このページは検証済みです

大學を出でゝ十年の後には大槪慢性の神經衰弱に罹ると云ふ、思ふに斯の如き庶務雜役は歐米の官廳會社等に於ては婦人のタイピスト位にて間に合せ居る仕事なり、何ぞ其爲に大學卒業の素養を有する靑年外交官を使役するの必要あらむ、余はかゝる機械的の勞働を以て前途爲すあるの身を束縛せらるゝ人々が久しからずして年少の意氣を消磨し盡し早く小成の老人と化し去るは誠に當然の結果なりと考ふ、乃ち外交官養成の方針を改め本省たると在外公館たるとを問はず雜役の大部分は庶務員をして之を掌らしめ少壯外交官には與ふるに時間の餘裕を以てし外交家本來の任務たる外部との接觸國情の硏究並に語學の練習等に其全力を傾注せしむる事今日に於て特に急務