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 從來の外務省は人材養成につき何等の考慮を費さざりしが如し、抑も外交官たる者は單に外交の事務のみを以て能事畢れりとなすものに非ざる限り須らく任國の國情を審にし更に進んでは一般國際政局に通曉して各種の國際問題を理解し得る能力を具有せざる可らず、然るに今日の外交官の大多數は終日營々として雜務に忙殺せられ殆ど修學硏鑽の餘暇なき有樣なるが故に外交家としての見識を養ふ事能はざるなり、現在當地にある少壯外交官中志ある人々は何れも現在の境遇に付不平を鳴らしつゝあるが其言ふ所を聞くに是等の諸氏は最初外交官補領事官補の時代四五年間は全く電信事務に服せしめられ夫より以後は繁文縟禮的庶務に忙殺せらるゝ爲硏究どころか