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統領と仰がるゝ人、現に其運動の中心として問題の人たるなり、氏の家は公園裏手の高臺にあり、此あたり幽靜閑雅にして瀟洒たる別莊相並ぶ、氏の家も其中にあり門前に巡査二名徘徊し居る外、普通の家と毫も異らず、導かれて應接室に入れば日本の金屛風あり支那の彫刻ありて主人公が多趣味の人なる事を物語り居れり、やがてドルテン氏は極めて快活なる面持にて出で來り我等四人に椅子を與へたる後佛語獨語取り交ぜにて約一時間に亘り將に生れんとするライン共和國に付其所信を披瀝せり、氏は打見たる所四十を餘り越えたりとも見えず、赭顏無髯にして何處となく米人の型あり、議論の高潮に達するや眉を揚げ肱を張り飽迄人を說破せずんば止まざらんとす。