Page:Sengo ōbei kenbunroku.pdf/155

提供:Wikisource
このページは検証済みです

を渡りウヰスバーデンに赴けり、此處は占領地以外なり、ウヰスバーデンは温泉地として有名なる所、千八百四十年ナツサウ公此地に居を定めてより人口亦大に增加し今は十萬を超ゆ、市街甚だ淸潔にして家屋輪奐の美、所謂獨逸式の粹を鍾めたりとも云ふべく予等の泊りしホテルナツサウの如きは規模の宏大にして裝飾の華麗なる事巴里一流のホテルと雖も遠く及ばず、ホテルの前は公園なり、欝蒼たる森林を以て圍まれ中に芝生ありて紅綠樣々なる美花を植ゑ又處々にウヰルヘルム、シルレル等の白き大理石像を配置す、地域甚だ廣からずと雖も幽邃にして淸楚なる市街と相俟ち好個の遊覽場なり。

 二十三日午前ドルテン氏を訪ふ、氏は所謂ライン共和國の大