Page:Sengo ōbei kenbunroku.pdf/130

提供:Wikisource
このページは検証済みです

ユ少尉(我々此度の旅行に佛國政府より特に案內として附せられし人)の二君と共にヴエルダン戰跡見物の爲十七日先發したれば余は其跡を逐ひて十八日夕一行の宿舍なるヴエルダン城塞へと赴けるなり。

 此城塞はルヰ十四世時代の築造にかゝり四周繞らすに數十丈の石垣を以てす、而して士官兵卒等の室は皆地下にあり、煉瓦造の隧道縱橫に通じ其中に板圍ゐを爲して各自の室に充つ、予の宛がはれたるも亦其一にして中に寢臺と小さき洗面臺とを備え兵卒等親切に水等を運び吳る、予は此室にて一日の汗と埃とを拭ひし後同じ地下室なる食堂に出でしに姉崎氏一行の外これも戰跡見物に來りしと云ふ丁抹人の一行あり、當要塞の司