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するもの甚多きに至れり。

 是を社會風俗の上より觀て最目立てる變化は婦人の服裝の上に認むるを得べし、以前婦人は何れも裳を長く曳きしものにて脚を出す事は(無論靴下を履きたる)决して無く是を露はせば男子の劣情を挑發すと稱せられたり、故に好事の人々は雨降る日橫町の人目に立たざる所にて婦人が泥濘を避くる爲裳をかかげて步くを窓より覗きて恐悅がりしものなりとか、然るに今の婦人は老人か田舍出の娘に非ざる限り皆脚を露はし居れり、甚しきは膝より以下を凡て出して輕業師の如き服裝をなし居るものあれど人之を怪まず、更に最近に至りては流行の本源と言はるゝロンシヤンの競馬にて靴下さへ履かざる婦人を見る