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年七月一三日再審開始決定をなし、同五二年二月一五日殺人の点に関する検察官の控訴を棄却する旨の判決宣告をした。同年三月二日右判決が確定し、殺人の点につき同原告の無罪が確定した。

  一審原告那須とみは同隆の母であり、その余の一審原告はいずれも同女と亡〔丁2〕(昭和四六年九月一七日死亡)との間に生まれた同胞である。
二 一審原告らは、殺人の点につき一審原告隆を有罪とすべき証拠は何一つ存在しなかつたのにかかわらず、右の如く有罪判決が言渡され、同原告が勾留や刑の執行を受けたのは捜査、訴追、裁判各機関の故意または過失による違法行為の結果であると主張する。
  刑事事件につき無罪の判決が確定した場合に、そのことだけで直ちに起訴前の逮捕、勾留、公訴の提起、追行、起訴後の勾留が違法となるものでないことは、原判決二四枚目表七行目冒頭から同丁裏三行目括弧書末尾までの説示(但し、右表九、一〇行目の各「公訴提起時」の次に「あるいは公訴追行時」を加え、同面末行の「および」から「証拠資料」までを削除する)のとおり、最高裁判所昭和五三年一〇月二〇日判決の示すところであり、また、裁判官がした争訟の裁判に上訴、再審等の訴訟法上の救済方法によつて是正されるべき瑕疵が存在したとしても、これによつて当然に国家賠償法一条一項の規定にいう違法な行為があつたものとして国の損害賠償責任の問題が生ずるわけのものではなく、右責任が肯定されるのは、当該裁判官が違法又は不当な目的をもつて裁判をしたなど、裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認めうるような特別の事情がある場合である(最高裁判所昭和五七年三月一二日判決)。
  尤も、右五七年判決は民事訴訟に関するものであるが、民事訴訟と刑事訴訟とで訴訟構造の本質及び裁判