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と云へり。其等觀念の或は相結合し或は相反撥する關係を以て一切の精神作用を說かむとしたるもの是れ即ちヘルバルトの心理學なり。

右に述べたる所によりて見ればヘルバルトの哲學は多元論なり。彼れの說は此の點に於いて、フィヒテ、シェルリング及びヘーゲルが一根元より自然界及び精神界の諸現象を說かむとせると大に相異なり。又ヘルバルトの哲學は變化を以て實相とせず、不變化なるものを以て實在とする常恒實有說にして、フィヒテ、シェルリング、ヘーゲル等が活動を說き發達を言ふ哲學とは全く其の趣を異にせり。ヘルバルトの謂ふ所レアールは原子論者の謂ふアトムに似たり、されどアトムの如く空間的のものにあらずして不可分なるものなり。又レアールは其れが空間的のものならざることに於いてはライブニッツのモナドに似たり、されどモナドの如く活動自發する精神的のものにあらず。


ショペンハウェル(Arthur Schopenhauer 一七八八―一八六〇)

《ショペンハウェルの哲學。》〔五〕ショペンハウェルの哲學はカントに其の出立點を有する所あれどもヘ