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開け行くに從うて如何なる觀念の吾人の心に入り來たるかを說明せむと試みたり。彼れは感覺によりて吾人の心に種々の作用の起こさるゝことを委しく說明せむと試み而して是等の感覺は感官の受くる刺激に對して非物質なる靈魂の反應することに起こるとなせり、即ち彼れはロックが吾人の心を白紙に譬へ外物に接する經驗によりて其の上に文字の記さるゝが如くに言へるを改めて吾人の心の反應といふことに重きを置きたるなり。彼れ以爲へらく、吾人の心は我といふ念に於いて統一の意識を有す、而して此の統一及び單純なることは多くの部分の結合によりて成る身體の有し得ざる所なり。されど靈魂の活動は唯だ外物の影響を受くるに從うて起こり來たるものなるが故に其の活動も畢竟ずるに感覺するといふことに歸し得べきものなり。吾人の靈魂は本來物體と相結ばりて存在する樣に成り立てるものにして、吾人は靈魂なき身體にもあらねばまた決して身體なき靈魂にもあらず。然れども身體は通常吾人の指して云ふ麤身と共に精微なるエーテル質の細身を有す、而して件の細身は麤身の死滅する後にも猶ほ潰頽することなくして常に靈魂に纏はるものなり、此の細身あるによりて吾人は死後