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り。前者の代表者はトマスに於いて見るべく、後者の好代表者はスコートスに於いて見るべし。

《オッカムの通性槪念論。》〔八〕スコートスに於いて已に現はれ初めたる信仰と道理との分離は彼れの弟子なる


オッカムのヸルリヤム(William of Occam. 一千三百四十七頃に死す)

に至りては更に著るくなりて殆んど分離の極點に達しぬといふも不可なし。スコートスに於ける個物論の傾向はオッカムに至りて十分に發達して遂に唯名論の復起となりぬ。オッカム論じて曰はく、若し通性が個物に先きだちて存在せば其の存在する狀態に於いては必ず個々物たらざるを得ず若し又通性を以て個物の中に存在する者とせば是れ通性を多なるものとなすなり何となればそは多なる物の一々に存在せざる可からざれば也。また此くの如く見る時は一個物は多くの實物の結合したるものとならざる可からず何となれば種々の通性が個物に幷