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Page:Onishihakushizenshu03.djvu/480

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アルベルトスに取り人界の論に關しては槪ねトマスに從ひたり(但し國家と敎會との關係を云ふところ旣にトマスの如くならず、尙ほ後に叙述する所を看よ)。

《神祕的學者、ボナヹントゥーラ。》〔一三〕全盛時代に於けるスコラ哲學は其の組織の偉大にして能く諸種の思想を網羅せる點に於いて第一期の辯證論と異なり。此の故に此の時代に於いては中央の流の外に別に神祕派と稱すべきものなし。但し他のものに比して神祕的なりし學者の最も有名なるはボナヹントゥーラ(Bonaventura 一二二一―一二七四)なるべし、然れども彼れの思想はさまでトマスの所說と異ならず。

《自然科學の硏究、ロージャー、ベーコン。》〔一四〕當時自然界に關するアリストテレースの著作の知られたる等の事によりて學問の區域大に擴張せられ、アルベルトス(其の植物に關する硏究の如き)を初めとして天然物の攷究に心を用ゐたる者少なからざりき。就中一特色を帶びたるをロージャー、ベーコン(Roger Bacon 一千二百十四年に生まれ一千二百九十二年には尙ほ生存せり)とす。彼れは特に希臘學術の精神に感化せられて眼を自然界の硏究に注ぎたる者にして、アレキサンダー、アルベルトス、トマス等を輕視し殊に此の輩の希臘語を能くせざるを嘲りたり。彼れは當代一般の思想界に於ける調