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《アルベルトス、その通性論。》〔四〕アリストテレースの學說を用ゐて敎會の敎理に偉大なる組織を與へむと試みたる最初の學者はヘールスのアレキサンダーなり(Alexander of Hales 英吉利に生まれ一千二百四十五年に歿せり)。彼れに優りてアリストテレースの哲學に通じ而して更に一層組織的に敎會の敎理を說かむとしたる者は次ぎに出でたるアルベルトス、マグヌス(Albertus Magnus, 即ち偉大なるアルべルトと稱せられたる者一千百九十三年獨逸に生まれ一千二百八十年に歿せり)。彼れは通性論に斷案を下して曰はく、通性は神の意中に於ける造化の模範としては個々物に先だちて(ante res)存し、多なるものに通じ之れをして一種類を爲さしむるものとしては個々物の中に(in rebus)存し、また吾人の抽象して造りたる槪念としては個々物に後れて(post res)存すと。此の解釋はおぼろながらに已にアベラルドスの所說に含まり居たりとも見るを得べきものなるが是れ實際二百年前にアヸセンナの道破したるもの、而して畢竟アルベルトはアヸセンナの所示を辿りてかゝる斷案を下せるなり。アリストテレースの哲學はアルベルトの所說に取り容れられたれども彼れに於いては其はなほ敎會の信仰と全く合一するに至らず寧ろ其が傍に並び立てる趣