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學に反對し凡べて希臘の文化を以て惡魔の所爲と考へたりき。

《オリゲーノスの思想、基督敎神學大要の成立。》〔九〕上述せるグノスティックの如く基督敎會の精神を離れたる者ありまた基督敎會の爲めに辯護を爲したる人々にも希臘哲學の思想を受け納れむとしたる人もあれば又之れに反對する人もありしが此の間に在りて最もよく基督敎會の敎理を組織したる者をアレクサンドリアなる敎校の人即ちクレーメンス及び其の繼續者オリゲーノスとす。彼等は宗敎に於ける信仰上の事柄を知識の上に言ひ表はさむとせり。故に此の點に於いてはグノスティックと同じけれどグノスティックが種々の他敎より得たる想像を混入して正當なる基督敎義とは云ふべからざるものを形づくれるとは異なりて此等アレクサンドリアの敎父は力めて基督敎會の宗敎的意識より離れざらむとせり。而して其の意識を本として基督敎會の敎義を組織するには希臘哲學の思想に假り而して其の組織したる所は最もよく敎會の宗敎的實驗に適合せるものなりき。後の基督敎會の神學は其の要點に於いて已にオリゲーノスの手に成れりと云ひて可なるべし。

クレーメンスは紀元後二百年頃の人なり。彼れはプラトーン風の思想にストア