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より萬物は成れるかといふに彼等はヘーラクライトスの學流を汲みてそを火と見たり。火は根本的物素にしてまた根本的精神なり、火は靈妙なる働きを具して萬物皆これより成れり。かくストア學派の物理說は物心を二分せざる一元論にして正さしく希臘哲學の始めに現はれたるイオニア學派風の物理說の再現せるものといふべし。さきにも云へる如く希臘哲學の在來の思想の復活する事これアリストテレース以後の希臘哲學の一特色なり。
《神火即理性論。》〔五〕ストア學徒は此の火を神と名づけまた之れを宇宙の理性と見たり。おもへらく萬物に秩序あり、目的あり、意味あるは皆此の神火即ち宇宙の理性(λόγος)の爲す所なり、此の宇宙の本體たる火の一部分は吾人の所謂通常の物質となり一部分はそを活動せしむる勢力即ち精神となる。地水火風と四つに分かたれたる所より云へば火は他のものを活動せしむる勢力また精神たるなり。此くの如く萬物は一元より成れども又遂に萬物が神火となり了することあり、而して是れ世界の終極なり。然れどもまた神火に具はる約束に從ひ更に新世界成りかくして循環止むことなしと。かく說ける所より見ればストア學派の自然哲學を名づけて