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等しからぬ者例へば手の如き一機關を成せるものと等質のもの(ομοιο μερῆ)即ち其の部分が相等しき質を成せるもの例へば肉又は骨の如きものとの區別を以て墓礎とせり。彼れは又動物を二大種類に分かち有血動物と無血動物となせり。今日の智識に照らせば彼れの生物學に幼稚なる所あるを見るは固より容易なれど兎に角生物論を其が哲學組織中の一部分として詳說したるはアリストテレースの偉大なる所なり。

《心理論。》〔二七〕アリストテレースはまた心理の硏究に於いて頗る精しく後の心理學のために其の一好模範を揭げたり。以爲へらく、吾人の精神は吾人が身體の相なり、故に精神は身體と離れずして之れを活動せしめ之れを形成する所以のものなり即ち其のエンテレカイア(ἐντελέχεια)なり。この方面より見れば吾人の精神は下等動物の精神と全く懸け離れたるものにあらず寧ろ共通の趣を具ふ但し下等動物のに比すればもとより高等なり。先づ其が根本的作用は感覺なり、而して感覺は特殊の感官が特殊の刺激に應じて特殊の對境を知覺するによりて生ずるものなり。委しくは知覺は知覺さるゝ對境の相が知覺するものに與へらるゝことによ