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る一つの球層廻轉すと。彼れは又遊星の複雜なる運動を說かむが爲めに其の附著する球層に相連なりて幾多の球層あることを說けり。之れを要するにアリストテレースの天文說は地球を中心とする幾多の球の回轉を說ける球層說なり。

《地上の萬物は地水火風の四元素より成る。》〔二五〕地上の萬物は地水火風の四元素を以て成る而して四元素には相反する二つの運動の傾向あり。地は地心に向かふ運動を有する求心的元素なり、火は地心を離れむとする遠心的運動を有する元素なり。而して水と風とは地と火との中間に在り、但し水は求心的運動多く風は遠心的運動多し。此の故に大地中心となりて位し之れを圍繞して水あり更に之れを圍繞して空氣あり空氣の上に火あり。而して此等の四元素は啻に塲處に於ける運動の傾向を異にするのみならず本來性質上の差別を有する者なり。アリストテレースは性質上の差別を以て分量上の差別に歸せしむべからざるものとせる點に於いて原子論者及びプラトーンと其の說を異にせり。四元素の性質の差別は一つには寒暖一つには乾濕の對待の相混和する割合によりて生じ來たる。火は暖にして乾なるもの、風は暖にして濕なるもの、水は寒にして濕なるもの、地は乾にして寒なるものなり。彼れが