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隨ひ永劫轉生して歇むとき莫かるべし。故に殺生肉食すべからず、動物の靈魂も元と吾人の靈魂と同一なりしがただ轉生してかゝる狀態に墮落せるのみ、若し轉生中其の罪業を棄て去らば至福の人となりて生まれ出で後ち神界に入るを得べし。エムペドクレースは敢て俗間の宗敎を攻擊する事をなさざりき、彼れはむしろ當時の宗敎の最も高尙なる代表者たらむとしたりしなり。


提要

《以上の提要及び其の難轉。》〔十〕エムペドクレースが思索の根本問題とせし所はエレア學派の主張せる不生滅不變化の實有を以て萬象の成壞變化を說明せむとするにあり。之れが爲めに說き出でたる元素說は彼れが學說の骨髓なり。其の元素を不生滅不變化のものと見たるはパルメニデースの學說に基づける所なれども之れを平等一如と見ずして本來性質上に四種の差別あるもの又集散離合するもの(即ち位置に於いて變動するもの、量に於いて割かたるべきもの)と見たるはエレア學派と一致せざりし所なり。而して愛憎といふ反對の動力を設け其が消長によりて萬物の成壞