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工夫也。

 神社佛閣破損し並に道橋修復、或は其所の衰微し、難儀に及たる時は其願の品篤と聞屆、吟味の上、樣子により勸進能相撲其外に少々の見せ物など日を限りて免許し、又は神社參詣の路次などには諸人の飢渴を凌ん爲に、相應の茶店豆腐の類賣場所を免し置事也、段々繁昌に趣下々のうるをひにも成時分、雜人のみかは若き諸侍の無智放埓に暮せし者、亂行醉狂の餘り人をそこなひ、婦人下郞など相手に口論などを仕出し、騷動に及し事あれば、其者罪より、先づ免許せし事を考もなく忽停止し、後迄も堅く成ぬ樣に成行事近頃輕々しき事也、第一亂心同樣の者に、大切成制禁を拵てもらふやうなる者也、右の類の曲者は品輕き重きを考へ急度申付、其者限り致置べき事なり、如斯なれば後々迄物言もなく、自然とおだやかに風俗迄も宜敷もの也、其證據には以前より有來りし場所にては何程貴賤群集しても、申分差て出來ず、其上惡黨尋者抔有之節は、政道の一助にも成事あり、たまには行義正敷、はれ成席にても、不慮成事有ものぞかし、何事も心の用ひやうに目の付樣專一なり。

 萬の藝能に二三年の間まだらに習ても、はや餘程能致と覺へ、人もゆるさぬに自慢をし、他を譏りあざける者は、一生上手に成事なし、惣て人の藝をこなし、他の仕方を笑、功者だてをする程見ぐるしきはなし、十に七ツ迄も仕そこなひ斗りにて、未練未熟の不覺者と知べし。

 何事に不依、不案內にては人の中にてはぢをかく事あげてかぞへがたし、是第一萬事に氣を付