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初夏


小川に

水の來そめる日は

野の末に

鳴く音󠄁の蛙


水すまし

すゞしく

流れ


杳きこと

おもふがうれしさ

夜は

螢さへ

ともし


木兎


穴󠄁を見るとはいりたがるといふ

君の性格が君をあやまらせた

ストーブの煙󠄁出しの穴󠄁から

君ははいつて來た

そしてこの洞くつは何といふ

だだつぴろさだと君は思つた

僕達󠄁の學校の割烹室だつたのさ

君は穴󠄁にはいれば

ひるまも光をさけられると考へてゐたのだ

ところが夜があけた

君はびつくりした

窓から光がどんどんはいつてくる

そして君には何も見えない闇の夜が

はじまつた


君はおぼろげに形象の見える方へ

手さぐりでいくやうに移つていつた

そして最後に室の隅の

戶棚の上にとまつた

だが君にはさつぱりわけがわからない

ここは一體どこだといふのだ

親しかつた君の「晝」はどこへ

いつてしまつたといふのだ

然 ふわつと何かゞ頭から

かむさる

君は昆蟲網の底で

もがきはゞたきながら

嘴をパシツパシツと鳴らせて

威嚇する

だが夜の小鳥達󠄁のやうに

昆蟲網は君の威嚇を怯れない

やがて君は鳥籠にうつされる