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お父󠄁さん

あなたの手は

鷄のあしのやうにみにくゝまがり

每日

石で叩かれたやうに

こちこちです

冬︀は乾いた餅のやうに

ママ割れるので

風呂のあと

あなたは黑い膏藥を

ひびの中に

詰めるのです

あなたは自分の手が

ひとの手のやうに

自由にならない

疊の上の一錢銅貨󠄁を

拾ふとき

どんなに無樣ぶざま

どんなに苦勞される

 ことか

私が僅かばかりの

年末賞與を

貰つて來たといへば

お父󠄁さんあなたは


兩膝を木彫のかなしい

老人のやうに小さく

 揃へ、

その上に

あなたのこちこちの

手を置くのです

さうです

あなたの手は

永い年月󠄁を

石のやうなものに

叩かれ

叩かれどうしてママ

來たのです

その手であなたは

一途󠄁に

生活を鬪つて

來たのです

あなたはそして

私の手とあなたの

手を見較󠄁べ

息子の手が

柔かく美しいのを

喜ぶのです

息子は

月󠄁給取りです