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 年とつた牛のやうな外套が

 似つかはしいのです

何故ならわたしの魂は

年とつた獸のやうに傷きママ疲れてゐるのです、ママ

    ×

わたしは外套を着て

美しき花󠄁のごとき乙女達󠄁と

戀をするのではありません、

銀座の明󠄁るい街頭をば

うきうきした心で步くのでは

ありません


わたしはその古いすりきれた外套に

くるまつて、

人のゐない所󠄁にいき、そつと

木によつかかつて、年とつた牝牛のやうに

靜かにしてゐるのです

疲れをやすめてゐるのです、ママ


お母さん

お願ひですから去年の外套を

送󠄁つて下さい。

穴があいてたらかがつて、

ちぎれたボタンはつけて、

あの懷かしい外套を、

送󠄁つて下さい。