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工房󠄁


樹木の中の

小さな部屋

小徑に面した

小さい窓

窓の下の

小さい机

友人達󠄁のやうに

親しい小さい書物達󠄁

一人の手をあたゝめるだけの

小さい火鉢

小さい花󠄁ばかりさす

小さい花󠄁瓶

燕の繪のあるマツチ箱、

ほこりのつもつた電燈の傘、ママ


灰󠄁皿代りの空󠄁罐

書物の上にこちら向いてる

桶をいたゞいた土人形

ここが私の工房󠄁だ

今私は歸つて來た

一週󠄁間の休暇ののちに

一週󠄁間の現實に疲れて

別れて來た肉󠄁親の顏が

うすらぐ

樣々の言葉が、力が

影が象ママが遠󠄁のく

ああ私の來るのは

ここだつた

さあ私の心が步きだした

心よ步いておゆき

おまへのすきな小さい道󠄁を

心よそして歌ひなさい