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仕立屋の娘


かの仕立屋のおかみは

その娘をわれにくれむと

云ひしとわが母のたまふ

まことなりや 母よ

われのごときにも

己が娘あたへんといふ人ありや

いでやわれ今より

かの仕立屋の前󠄁通󠄁りて

かの娘をかいまみん

いなとよ 母上

われよくかの娘は知れれども

われにくれんといふ娘なれば

改めて見んには

かく云ひてわれは

寒󠄁き夜を襟卷にて面かくし

トノモに出でたり


かの仕立屋には窓先に

小さき電燈ともり

かの娘はひたすらにみしんをまはせり

やよ可憐なる仕立屋の娘

ねもごろに衣縫󠄁へかし

われこれより力をいたし

一人まへのをとことならば

故里にかへりやさしき汝を

妻とはせんに

そを待てよ娘

必ず待てよ

ねもごろに つつつつと

衣縫󠄁ひつつ。