いはず、はやく周の代のほどにすら、諸侯といふきはの者も、これを破れるが多ければ、ましてつぎ〳〵はしられたり、姉妹などにさへ姧けし例もある物をや、然るを儒者どもの、昔よりかく世人の守りあへぬことをば忘れて、いたづらなるさだめのみをとらへて、たけきことにいひ思ひ、又皇國をしひて賤しめむとして、ともすれば、古兄弟まぐはひせしことをいひ出て、鳥獸のふるまひぞとそしるを、此方の物知人たちも、是をばこゝろよからず、御國のあかぬことに思ひて、かにかくにいひまぎらはしつゝ、いまださだかに斷り說ることもなきは、かの聖人のさかしらを、かならず當然理と思ひなづみて、なほ彼にへつらふ心あるがゆゑなり、もしへつらふこゝろしなくば、彼と同じからぬは、なにごとかあらむ、抑皇國の古は、たヾ同母兄弟をのみ嫌ひて、異母の兄弟など御合坐しことは、天皇を始め奉て、おほかたよのつねにして、今京になりてのこなたまでも、すべて忌ことなかりき、但し貴き賤きへだては、うるはしく有て、おのづから、みだりならざりけり、これぞこの神祖の定め賜へる、正しき眞の道なりける、然るを後世には、かのから國のさだめを、いさゝかばかり守るげにて異母なるをも兄