まねく人に知せず、己が私物にせむとするは、いと心ぎたなきわざなりかし、
あなかしこ、天皇の天下しろしめす道を下が下として己がわたくしの物とせむことよ、
下なる者は、かにもかくにもたゞ上の御おもむけに從ひ居るこそ、道にはかなへれ、たとへ神の道の行ひの、別にあらむにても、其を敎へ學びて、別に行ひたらむは、上にしたがはぬ私事ならずや、
人はみな、產巢日神の御靈によりて、生れつるまに〳〵、身にあるべきかぎりの行は、おのづから知てよく爲る物にしあれば、
世中に生としいける物、鳥蟲に至るまでも、己が身のほど〳〵に必あるべきかぎりのわざは、產巢日神のみたまに賴て、おのづからよく知てなすものなる中にも、人は殊にすぐれたる物とうまれつれば、又しか勝れたるほどにかなひて、知べきかぎりはしり、すべきかぎりはする物なるに、いかでか其上をなほ强ることのあらむ、敎によらずては、えしらずえせぬものといはゞ、人は鳥蟲におとれりとやせむ、いはゆる仁義禮讓孝悌忠信のたぐひ、皆人の必あるべきわざな