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Page:NDL948605 国字としてのローマ字.pdf/7

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日本語は ローマ字を以て書かれざるべからず,若 し然らずば 日本語は 終に死んで了うであらう。 縱し死なないにしても 日本の文明は それがために 阻害せられて 日本國其物の存在が 危くせらるるで あらう。そうして 日本語が ローマ字を以て 書 かれ得ない理由は無いのである。歐洲に在りては ハンガリー語とフィンランド語とは 日本語と同じく アルタイ系の語であるにかかはらず 立派にローマ字 を以て 書かれて すべての文明的言語と思想とを同 化しつつある。日本語も 二者の例に傚ひ ローマ 字を以て 立派に文明的言語の中に仲間入りすること が出來る。左近義弼君は 獨創的にして勇氣に富み, 玆に 日本國の興亡にかかはる此大問題の解決を試み んと欲す。余は 君が單獨の力を以て 能く此大事 業を完成し得やうとは 思はない。然し乍ら 君の 如きは 確かに解決を試むるの資格を有する人である, 而して 日本人,否な,世界人は 此事に關する君の意 見を聞いて 大に利益せられざるを得ない。殊に注 意すべきは 左近君の目的の 是に非ずして 彼に在 る事である。君は ローマ字體の日本語を完成して, 然る後に 君の終生の事業に就かんとするのである。 君の志望や 遠大である。余は 神が 君の此試み を祝福し給はんことを祈る。

內村鑑三