如くなる者、今既に三冬嚴寒の日といへども、襪せず爐せず、馬齒既に古稀を越えたりといへども、指すべき半點の小病も亦なき事は、彼の神術の餘勳ならんか。云ふ事なかれ、鵠林半死の殘喘、多小無義荒唐の妄談を記取して、以て佗の上流を誑惑すと。是れ宿に靈骨有つて、一槌に既に成ずる底の俊流の爲に設くるにあらず。癡鈍予が如く、勞病予に類する底、看讀して仔細に觀察せば、必ず少しき補ならんか。只恐る、別人の手を拍して大笑せん事を。何が故ぞ、馬枯萁を咬んで午枕に喧すし。
遠羅天釜
白隱
鍋島攝州侯近侍に答ふる書
日之昨は遠路御使札益々御勇健にて朝鮮人御馳走首尾よく相濟御安堵の旨一段の御事に候、草廬恙なく罷在候、又高慮を勞せられ間敷候、且又動靜二境の上に於て御工夫怠慢なく、おん心掛なされ候絛珍重の御事に候、其外に書中に仰越れ候件件逐一老僧が野情に相契ひ、御奇特千萬の御事如何計り悅び入り候總じて一切の修行精進工夫の間に於て、心掛惡く侍れば、動靜二境に障られ、昏散の二邊に隔てられ、心火逆上し、肺金痛み悴け元氣虛損して難治の病症を發するも間々多き事に侍り、又內觀の眞修に依て能々修練致し侍れば、至極養生の祕訣に契つて心身堅剛に氣力丈夫にして、萬事輕快に法成就にも到る事に候、去程に大覺調御も阿含部に於て、右の趣を委しく教諭此あり、天台の智者大師も其の意を汲で摩訶止觀の中に丁寧に示し置れ侍り、書中の大意は縱ひ何分の聖教を披覽し何分の法理を