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Page:NDL925789 白隠禅師法語録 part1.pdf/20

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成ぜざる。其の功驗の遲速は、行人の進修の精麤に依るらくのみ。走始め丱歳の時、多病にして、公の患に十倍しき、衆醫總に顧みざるに到る。百端を窮むといへども、救ふべきの術なし。此に於て、上下の神祇に祈つて、天仙の冥助を請ひ願ふ。何の幸ぞや、計らずも此輭酥の妙術を傳受する事を。觀喜に堪へず、綿々として精修す。未だ期月ならざるに、衆病大半消除す。爾來身心輕安なる事を覺ゆるのみ。癡々兀々月の大小を記せず、年の閏餘を知らず、世念次第に輕微にして、人欲の舊習もいつしか忘れたるが如し、馬年今歳何十歳なる事もまた知らず。中頃端由有りて若州の山中に潜遁する者大凡三十歳、世人都て知る事なし。其の中間を顧るに、恰も黃粱半熟の一夢の如し。今此の山中無人の處に向つて、此の枯槁の一具骨を放つて、大布の單衣纔に二三片を掛け、嚴冬の寒威、綿を折くの夜といへども、枯腸を凍損するに到らず、山粒すでに斷えて穀氣を受けざる事、動もすれば數月に及ぶといへども、終に凍餧の覺もなき事は、皆此の觀の力ならずや。我今既に公に告ぐるに一生用ひ盡さざる底の秘訣を以てす、此外更に何をか云はんやと云つて、目を收めて默坐す。予も亦涙を含んで禮辭す。徐々として洞口を下れば、木末纔かに殘陽を掛く。時に屐聲の丁々として山谷に答ふるあり。且つ驚き且つ怪んで、畏づ畏づ回顧すれば、遙に幽が巖窟を離れて自ら送り來るを見る。即ち曰く、人迹不到の山路西東分ち難し、恐らくは歸客を惱せん、老父しばらく歸程を導かんと云つて、大駒屐を著け痩鳩杖をひき、巉巖を踏み嶮岨を陟る事、飄々として坦途を行くが如く、談笑して先驅す。山路遙かに里許を下りて、彼の溪水の所に到つて、即ち曰く、此の流水に隨ひ下らば、必ず白川の邑に到らんと云つて、慘然として別る。且らく柴立して、幽が回歩を目送するに、其の老歩の勇壯なる事、飄然として世を遁れて羽化して登仙する人の如し。且つ羨み且つ敬す。自ら恨む、世を終るまで此等の人に隨逐する事能はざる事を。徐々として歸り來つて、時々に彼の内觀を潜修するに、纔に三年に充たざるに、從前の衆病、藥餌を用ひず鍼灸を假らず、任運に除遣す。特り病を治するのみにあらず、從前手脚を挾む事を得ず、齒牙を下す事を得ざる底の難信難透難解難入底の一著子、根に透り底に徹して、透得過して大觀喜を得る者、大凡六七回、其の餘の小悟、怡悦踏舞を忘るゝ者、數を知らず。妙喜の謂ゆる大悟十八度小悟數を知らずと、初めて知る、寔に我を欺かざる事を。古へ二三緉の襪を著くといへども、足心常に氷雪の底に浸すが