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- 傲然たる者なり。質屋が店の格子の如く、人の心に急速なる變化を與ふるはあらじ。
- 歳每の春の花也、秋の月也。特り今年に限りて、物飲み、物食ふを要せんや。故に風通、一樂の車をつらねて駈行くは、山樓水亭の何れにもあらず、鹹き鮭一切れ、晩餐の膳の上にお還りを待てばなり。今の驕奢といふは、大抵此の如きものゝみ所謂路人に耀かすに過ぎざるものゝみ、人前のみ。
- 名は必ずしも紳士録、職員録に上れるをもて、遂げたりと思惟する勿れ。あまりにそれは輕はづみ也、早手廻し也、無論けちなる料簡也。高利貸といふの臺帳に記入せられざれば、世間は決して名士と呼ぶことなし。
- 名士の高利貸に於けるは、狐の稻荷に於けるが如し。司命者也。高利貸なかりせば、世は斯の如く靜穩なる能はず、隆盛なる能はず、箸の上げ下しにまで萬歲を唱ふる能はず。
- 洋の東西、時の古今に論なく、國力充たず、國威揚らずなどいふことあるは、其處に高利貸を缺くかためなり。利のみならず、總てに高き營業なることは、文明國に多く栖息すといはんよりは、跋扈するを見て知るべし。
- 縱横計不就、慷慨志猶存。高利を借れるなり。人生感意氣、功名誰復論。情婦を持てるなり。