288
兒も、父も、親族も恃怙にあらず、死王に囚へられたるものには親族も恃怙たらず。
289
戒によりて自ら制せる賢者は、此の意を知りて、涅槃に赴く道を疾く疾く淸くせよ。
(1) 八正道を云ふ。 (2) 四聖諦の謂なり。 (3) 佛を云ふ。 (4) 欲等の箭を除くの法。 (5) 淨とは涅槃の謂なり。以下三偈皆同一の意に見よ。 (6) 天然の林間に猛獸毒蛇等の危險あるが如く、貪瞋癡煩惱の林にも種種の危難あり、由りて煩惱を林に譬へたるなり、或は Vana (林) Vanatha (下生)には共に又煩惱、欲等の意あり、三四四偈參照。 (7) 或は、寂靜の道を增長せよ、涅槃は善逝の說き給ひし所なり。
廣衍品第二十一
小樂を棄てて、大樂を見るべくば、賢者は大樂を觀て小樂を捨つべし。
291
他に苦を與へて、己の樂を望むものは、怨憎の擊縛に絆されて、怨憎より脫るることなし。
292
爲すべきことを爲さず、爲すべからざることを爲し、虛誇にして〔而も〕怠惰なるもの、斯る人の諸漏は增長す。
293
人常に精進して、身觀念を修し、非事に遠かりて、常に是事を行ひ、而して念と覺とあり、斯る人の諸漏は滅盡に至る。
294
(1)母と父とを殺し、兩刹利王を殺し、國土も、其の依屬も倂せ滅して、婆羅門は苦患なきに至る。
295
母と父とを殺し、(2)兩婆羅門を殺し、第五に虎類を滅して婆羅門は苦なきに至る。
296
(3)瞿曇の弟子は常に覺醒せり、彼等の晝夜常に念ずる所は佛にあり。