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年のうちにもあらめ」と仰せらるゝほどより苦しげにならせ給ひにたり。例の御かたより、人遣したり。「さる心などなき人と聞けど、 せめて思ひやるかたのなければいふなり。こなたへ唯今のぼり参りなむや。道などぞふたがりて、かたはらいたく思しめせ」と仰せられたれ、「いかでかはまゐらじと申さむ。承りぬ」と申したれば、「さらば今のほどに」と仰せられたればまゐりぬ。はなれぬ人なれば宣旨をぞあそばさせ給ひて、「御心ちのありさま間はせ給ふ。文まゐらするまゝに、申さむと夥しく申し散らしけりなど漏れ聞えて惡しき事もやなど覺ゆればさもえもうさず。わざと召して問はせ給ふに、申さざらむも惡しかりぬべければ「唯上りて見まゐらせ給へ。さはいみじう苦しげに見えさせ給ふ」と申せば、「さはもしや、とほりよからむひまに」と申してとく返し遣しつ。参りて見れば、「殿や大臣殿、院より戒受けさせ給ふべきなりと、奏せさせ給うけり」とてせんせい法印召すべきさたせられ、その御設けどもせらる程なりけり。かやうの後ならば夜も明けぬければ、宮の御方よりめしつれば参りたりつれば、「かうかうこそ仰せられつれ」と申す。「道の所せばきぞ」と弱けに仰せらゝ、苦しげに思しめしたり。「殿にも上りて見せまゐらせばや」と申させ給ひければ今の程宮上らせまゐらせむ、物騒がしからぬさきにと思ふに上らせ給ひぬれば「御傍に人のなきが惡しきぞ」と沙汰せられて、そのよしを申されけるなめり。「返りまゐらせ給ひて、たゞすけばかりは侍へ」と仰せらるゝ。さて三位殿、おはして、殿たち、皆障子の外に出させ給ひぬ。 長押のきはに、四尺の御几帳立てられたり。御枕がみに、おほとなぶら近く參らせて、あかあ