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Page:Kokubun taikan 09 part2.djvu/15

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見れば、我が局に起きたる二藍の唐衣かづきたるものなげ入れて、人のいるをみれば藤三位殿の、かくと聞きて參り給へるなりけり。「あな心憂や、例ざまにうち見あげ給ひつらむを、今一度えまゐらせずなりぬる心うきを、何の物忌を𛃰てよび給はざりつるぞ。年頃の御病をだにはづるゝ事なく扱ひ參らせて、限のたびしもかく心ちをやみてける、身の宿世の心憂き事」といひつゞけて泣き給ふ。我は御汗をのごひ參らせつるみちのくに紙を顏におしあてゝそへゐられたる。あの人たち思ひまゐらせらるらむにも劣らず思ひまゐらすと、年ごろは思ひつれど猶󠄁劣りにけるにや、あれらのやうに聲立てられぬはとぞ思ひ知らるゝ。大臣殿參らせ給ひてうち見參らせて、いかにおぼしとくにか、持ち給へる扇󠄁の骨をたゝみながらはらはらとうちすりて泣きて出で給ひぬと思ふほどに、今は御格子參れとありけるにやと見えて、即ち𛃰たしき殿上人なめり、源中納󠄁言の四位少將顯國、右大臣殿の加賀介家さだ、あかあかと、日のさし入りてあかきに、はらはらとおろしていぬ。あなあさまし、こは如何にしつるよと、えさらぬ心にまかせぬ日の暮るゝだに大となぶらをとくさし出でよかしとまだおろさぬ先に心もとなく覺えしものを、はなばなとさし出でたる日におろしこめてわざと暗󠄁うなすよと覺ゆるにものぞおぼえぬ。藤二位「あないみじ。かくはいかにおろしつるぞや。かひなき御顏ながらもあかりて守り參らせてあらむとこそ思ひつれ」と聲もをしまず泣き給ふ。大臣殿又󠄂まゐりて、御ぞ今はぬぎかへさせまゐらせて、「御疊今は薄くなさむ」とえもいひやり給はずのたまうて、御ひとへ取りよせ給うて引きかづけ參らせなどせられぬ。長押の下にまかり