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かゝる程󠄁に、日はなばなとさし出でたり。日のたくるまゝに、御色の月頃よりも白く腫れさせ給へる、御顏の淸らかにて御びんのあたりなど御削󠄁り櫛𛃰たらむやうに見えて、唯おほ殿籠りたるやうに違󠄂ふことなし。僧︀正今はと見はれ奉りて、やをら立ちて御かたはらの御障子を忍󠄄びやかに引きあけて出で給ふに、大貳三位、「あな悲しや。いかに𛃰なし出でさせ給ひぬる」と「助けさせ給へ」と聲も惜まず泣き給ふを聞きて、さながら泣きとよみあひたり。右衛門督、源中納󠄁言、大臣殿の權中納󠄁言、中將の御乳󠄁母子の君だち、十俆人、女房󠄁の侍らふかぎり聲をとゝのへて、せめて覺ゆるまゝに、御障子を、なゐなどのやうに、かはかはと引きならして泣きあひたる夥しさ、ものおぢせむ人は聞くべくもなし。今一度見參らせむとて親しき上達󠄁部、殿上人、我も我もまゐれど、うときは呼びも入れず。大貳三位、大殿籠りたるやうなる人を「我が君や、いかにして方々をば捨ておはしましぬるぞ。生れさせ給ひしより片時離れまゐらせず、あやしのきぬの中よりおぼしまゐらせて、いづれの行幸にも離れず𛃰りに立ちさきに立ち、病の心ならぬ里居十日ばかりするにも、戀しくゆかしく思ひまゐらせつるに、片時見まゐらせでいかでか侍らはむ。たゞ具しておはしましね。今一度驚かせ給ひて、見えさせ給へ。あな悲しや。戀しさをいかにしてか侍らはむ。唯召してぞ」と御手をとらへてをめきさけび給ふ、聞くぞ堪へがたき。この聲を聞きて、そこらのゝしりつるくじうさどもひしとやみぬ。山の座主今ぞまゐりて僧︀正の出で給ひぬる障子引きあけ給へば、三位「山の座主仁源をも今は何にせむずるぞ」といひつゞけて泣き給ふ。御さうじよりなげ入るゝものを何ぞと