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給ふ。大殿の三位「かく靜まらせ給へる程󠄁に、せまほしき事のあり、𛃰て參らむ」とて「まゐらせ給へ」とあれば添ひ臥しまゐらせぬ。𛃰ばしばかりありて、例の定海︀阿ざ梨、御几帳のそばに召し入れて「觀音󠄁品讀みて聞かせよ」と仰せらるればいと尊󠄁く讀み給ふ。いかに思しめすにか、「偈をよめ」と仰せらるゝ。思しめすやうあるなめりと、心えがたし。大臣殿の三位、歸り參られたれば御足打ちかけて御手を頸に打ちかけさせ給へば、えはたらかねば、三位殿、我が居たるやうに御あとの方に侍はる。例の「水など參らせ御汗などのごへ」と仰せらるれば、御枕上なるみちのくに紙して、御びんのわたりなどのごひまゐらする程󠄁に、「いみじく苦しくこそ泣かるれ。我は死なむずるなりけり」と仰せられて、「南無阿彌陀佛」とぞ仰せらるゝを聞くに、唯におはします折にかやうの事は□如元くの下人までいまいましき事にこそいふを、御口よりさはさは仰せられ出すときくは夢かなとまであさましければ涙もせきあへず。殿御顏にあてゝ「佛を念ぜさせ給へ。書かせ給ふと聞きまゐらせし御筆の大般若はいづこにかおはしますぞ。それをよく念じ參らせ給ふ。これにやなど見せまゐらせ給へば「これなり」と仰せらるゝ。「なほ苦しうこそなり增るなれ」とて唯せきあげにせきあげさせ給ふ御けしきにて、「只今死なむずるなりけり。大神︀宮助けさせ給へ。南無平󠄁等大會講󠄁明法華」など誠に尊󠄁き事ど起󠄁し參らするに、日頃はかやうに起󠄁しまゐらするに、いと所󠄁せく抱󠄁きにくゝ覺えさせ給へる