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たしめ給へ」と申さるゝ、聞くに唯今やませ給ひぬると聞えてめでたき。』さて御戒受けさせまゐらすれば、いとよく「たもつたもつ」と仰せらるゝ。殿𛁠ち「たもつと仰せらるゝや」と申させ給へば、うなづかせ給ふ。受けさせまゐらせば、たゞ法印出でさせ給へば、故右大臣顕房の子に、定海︀阿ざ梨といふ人の、もとより侍hるゝ、御枕上に近󠄁く召しよせ仰せらるゝやう「經誦して聞かせよ。定海︀が聲きかむも、今宵󠄁ばかりこそ聞かめ」と仰せられて、いみじう苦しげに思しめされたれど、御涙もえ出でず。それを聞かむ心ち、誰かはなのめなる心ちせむ。誰も堪へがたき心地ぞする。阿ざ梨やゝもいらへなし。「經の聲も聞えぬはあれもためらはるゝなめり」と聞ゆ。𛃰ばしばかりありて少し出されたるを聞けば方便︀品の比丘偈にかゝるほどの長行をぞよまるゝ。つくづくと聞かせ給うて、「衆中之糟糠佛威徳故去」といふ所󠄁より御聲うちつけさせたまひて、露ばかりがほど滯るところなく、ゆうゆうと讀み聞かせ參らせらる。明暮一二の卷をうかめさせ給ふど聞きおき給へる事なればなめり。かゝる程󠄁に、三位のもとより、むげに重くおはしますよし聞きて、女房󠄁おこせて、こまかの事聞くに威如元にけり。「いませ給ふとも參りて、局ながらも聞き參らせむ。よそにて𛃰からせ給ふ。上らせ給へ」といへばやがてぐして參りぬ。見れば、大貳三位うしろの方抱󠄁きまゐらせて、大殿の三位、ありつるまゝに添ひ臥しまゐらせられたり。御あとの方につい居たれば、大貳三位「苦しうせさせ給へば、申しつるぞ。その足捕へ參らせ給へ」とあれば執へ參らせ給ひたり。御汗のごひなどせさせ