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Page:Kokubun taikan 09 part2.djvu/10

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かとありけるに、添ひ臥しまゐらせたり。はしたなき心ちすれどえのかず。「宮上らせ給ひたる」とあない申せば、「いづら、いづく」など仰せらるゝは、むげに御耳も聞かせ給はぬにやと思ふに心憂く覺ゆ。「その御几帳のもとに」と申せば、「いづら」と御几帳のつまを引きあけさせ給へば、「こゝに」と申させ給ふ。ものなど申させ給はむとぞ思しめすらむと思へば、御あとの方にすべりおりぬ。ちがひて長押の上に宮のぼらせ給ひ、𛃰ばしばかり何事にか申させ給ふ。殿の御聲にて「久しうこそなりぬれ。御粥などはや參らせむや」と仰せらるゝに宮聞かせ給ひて、「今はさば歸りなむ。明日の夜も」と仰せられて歸らせ給ひぬ。例の傍に參りて、水などまゐらす。殿たち參らせ給うて、「今は法印召し入れよ」とてふたまなるけいなどまゐらせて、戒の沙汰せさせ給ふ。法印まゐらせ給ひぬれば、御几帳ばかり隔てゝ「御直衣取りてまゐれ」と仰せらるれば取りてまゐりたり。御手水まゐらすべけれど起󠄁き上らせ給ふべきやうなければ、紙をぬらして御手などのごはせまゐらせなどする程󠄁ぞ悲しき。御かうぶりなど持ちてまゐりたれば、するかせ、ぬかのほどにおし入れて御直衣引きかけてまゐらせたる、御紐さゝむと、思しめしたるなめり。さゝむとせさせ給へど、御手も腫れにたれば、えさゝせ給はぬ、見る心ちぞ目もくれてはかばかしう見えぬ。鐘うち鳴らして、事の趣申しあきらめ給ふ。「十戒を先の世に受けさせ給ひて、敗らせ給うはさりければこそ、この世にて十善の位長く保ち、佛法をあがめ、一切衆生を憐れみさせ給ふ心、いまだ、昔より今に至るまでかばかりの帝王おはしまさず。いとゞ今宵󠄁の御戒の𛁈るしに、速󠄁に御なやみ消󠄁除消󠄁散して百年の御命長く保