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Page:Kokubun taikan 07.pdf/713

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だかにはなし。をさなきわらはべなどのしどけなくかたりしまゝなり。この中に御覽じたる人もおはすらむ。うけたまはらまほしくこそ侍れ」」といふ。「「御廉のうちにも、大納言二位殿琵琶、播磨の內侍箏、女藏人高砂といふも琴彈くとぞきこえし。まことにやありけむ。中務の宮もまゐり給へり。兵仗たまはり給ひて御直衣に太刀はき給へり。御隨身どもいと淸らにさうぞきて所えたるさまなり。萬歲樂より納蘇利まで十五帖手をつくしたるいとみどころおほし。靑海波を氣色ばかりにてやみぬるぞ飽かぬ心ちしける。暮れかゝるほど、花の木の間に夕日華やかにうつろひて山の鳥も聲をしまぬほどに、陵王のかゞやき出でたるはえもいはずおもしろし。その程うへも御引直衣にて倚子につかせ給ひて御笛吹かせたまふ。常より殊に雲ゐをひゞかすさまなり。宰相中將顯家、陵王の入あやをいみじうつくしてまかづるを召しかへして前關白殿御ぞとりてかづけ給ふ。紅梅のうはぎ二色のきぬなり。左の肩にかけていさゝか一曲舞ひてまかでぬ。右のおとゞ太鼓うち給ふ。その後源中納言具行採桑老を舞ふ。これも紅の打ちたるかづけ給ふ。又の日は無量光院の前の花の木蔭に上達部たちつゞき給ふ。廂に倚子立てゝうへはおはします。御遊はじまる。拍子に治部卿まゐる。うへも櫻人うたはせ給ふ。御聲いとわかく華やかにめでたし。去年の秋ごろかとよ、すけちかの中納言にこの曲はうけさせ給ひて、賞に正二位ゆるさせ給ひしも、今日のためとにやありけむといとえんなり。物の音どもとゝのほりていみじうめでたし。その後歌どもめさる。花を結びて文臺にせられたるは保安のためしとぞいふめりし。春宮大夫公宗序かゝれけり。