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り。晝のつたの葉の散りそひたるを人々見るに、宮「それにおのおの歌書きて」とのまたへば中將爲藤朝臣、
「もみぢ葉になくねはたえずうつせみのからくれなゐも淚とや見む」。
淸忠朝臣、
「やま姬のなみだの色もこのごろはわきてやそむるつたのもみぢ葉」。
光忠朝臣、
「世の中のなげきの色をしらねばやこぞにかはらぬつたのもみぢ葉」。
これらをとりあつめて北殿の內親王の御方へ奉らせ給へれば、
「さすがなほ色は木の葉にのこりけりかたみもかなし秋のわかれ路」。
雨うちそゝぎてけはひあはれなる夜、いたう更けて帥宮例の北殿へ參り給へれば、姬宮も御殿ごもりぬ。さぶらふ人々もみなしづまりぬるにや格子などたゝかせ給へど、あくる人もなければ空しく歸らせ給ふとて、書きてさしはさませ給ふ。
「おのづらながめやすらむとばかりにあくがれきつるありあけの月」。
御かへし、またの日、
「いたづらに待つよひすぎしむらさめは思ひぞたえしありあけの月」。
月日程なくうつりぬれば、院も宮々もおのおのちりぢりにあかれ給ふほど、今すこしものかなしさまさる御心のうちどもはつきせねど、世のならひなればさのみしもはいかゞ。昭慶門