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大鏡卷之三
枇杷左大臣仲平 基經次郞
貞信公忠平 基經四郞
淸愼公實賴
廉義公賴忠
小一條左大臣師尹
九條殿師輔
左大臣仲平
このおとゞは、これ基經のおとゞの次郞御母は本院の大臣におなじ。大臣の位にて十三年ぞおはせし。枇杷左大臣と申す。御子もたせたまはず。伊勢が集に、
「花ずゝきわれこそしたに思ひしかほに出でゝ人にむすばれにけり」
などよみ給へるはこの人におはす。貞信公よりは御兄に當らせ給へど、二十年まで大臣になり後れ給へりし。遂になり給へれば、おほきおほい殿の御よろこびの歌、
「おそくとくつひに咲きぬる梅の花たがうゑおきし種にかあるらむ」。
やがてその花をかざして御對面の日喜び給へる。庇の大饗せさせ給ひけるにも橫ざまにすゑさせ給ひけるこそ、年ごろ少しかたはらいたく思されける御心とけて、いかにかたみに心ゆかせ給へりけむと御あはひめでたけれ。この殿の御心ぞ誠に美はしく坐しましける。皆人きゝしろしめしたる事なり。申さじ。このおとゞに伊勢の御息所の忘られてよむ歌なり、